まがい物の記憶
君を埋めたアスファルト
踏みつけた蝉の死骸
下ろし立ての靴を汚した
諦めたようにね そっとまぶたを閉じた
飲みこぼした水が首を伝い
熱を舐めた
汗ばんだ体捩らせ
だるそうに口を開けた
あいしてる 吐き捨てたような声が
耳にこびりついたまま
一人果てた
見る気の無いテレビ
汚い海 人の群
生ぬるい部屋の中で
溶けた君に溺れていたい
食べ飽きた桃から 滴る甘い雫
むしゃぶりつく肌はいつも同じ
白い背中
ざらついた舌を絡ませ
泥濘に指を入れた
もういいよ ただそれだけの言葉が
言えないまま過ぎて行く
淀む季節
薄明るい朝に微睡みながら触れた
知り尽くしたはずの君の胸が
砂に変わる
浅はかな 夢の代償
追憶を波が攫う
あいしてる 枯れ果てたような声は
誰にも届かず消えた
夏の終わり