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2010/12/06

XMEさん経由で一部楽曲のJASRAC部分信託を致しました。

10月にはほとんど申請処理終わってたのですが、やっと発表できます。いろいろ団体出てきますが今回前半は敬称略で。XMEさんからのプレスリリースはこちら(pdf注意)

わかりやすく言うと今までとどう変わるの?

■JASRACと包括契約しているライブハウスなどで演奏する場合、JASRAC部分信託曲は自分に許可無く演奏が可能になります。
※サイトで配信しているカラオケ音源を使う場合は自分にカラオケ音源についての権利(原盤権)が残っているので別途許可が必要です。
■カラオケで歌って頂いたり、その他適切な使用の際に自分を含めた作詞作曲の方に使用料が入るようになります。

その他は基本今までと変わりありません。ネット上での歌ってみた・ニコカラ・その他マッシュアップなど引き続きご自由に。自分の場合、二次使用のガイドラインについてはこちらをどうぞ。危うげなものについては現状どおりお問い合わせ頂ければ回答します。ちなみのこの件、自分の曲については作詞でご協力頂いた方にも賛同頂いて、足並み揃えて進めています。

ちなみにどれがその部分信託曲になるの?という点については、Worksに「JASRAC部分信託曲一覧」ページをつくりました。基本的にカラオケに入っている楽曲と考えて頂いて構いませんが、ライブ使用がある場合など、これから随時追加していく可能性もあります。

権利関係に詳しい方・知りたい方向けに具体的に

JOYSOUNDを運営している(株)エクシングの子会社である(株)エクシング・ミュージック・エンタテイメント(以下XME)の音楽出版事業部に一部楽曲の作詞作曲の著作権について「演奏」「カラオケ」「放送」「貸与」を契約により譲渡、JASRAC会員であるXMEからJASRACに部分信託を行います。

なぜこの4つの部分信託なのか、実際の例を挙げつつ説明しますね。

■カラオケ・ライブで歌われた場合

カラオケについては、カラオケの機器を作って販売している会社は「カラオケ」の使用料支払い、その機械を使って演奏し、歌わせているカラオケ屋は「演奏」の使用料支払いというカテゴライズになります。金額としては圧倒的に後者がメインです。ライブについてもお察しの通り「演奏」。各所、大抵の場合は包括契約をJASRACと結んでいます。JASRACは全国地道にカラオケ屋やライブハウスを回って徴収をしています。全国をカバーできる著作権団体は現在JASRACしかありません。

「カラオケ事業者は使用料をボカロPに払え!」という声に対して対応が難しいのはカラオケやライブの楽曲使用料の流れがそういう仕組み(=演奏料がメインで、そちらは演奏施設→JASRACでの徴収。カラオケ事業者はそこに関わっていないから)なのです。

「JASRAC契約してるライブハウスなら誰でも演奏ok」なので「あのバンドあるいはあの主催の所ではやって欲しくない」というのを止められないデメリットについては、「耳コピする根性があるならまあいいや。CDにしたり、カラオケ音源ライブとかは許可なしには出来ないし。」という心持ち。個人的には。

あと、カラオケを除いたライブ演奏についてはまだJASRACがサンプリング調査のはずなので、余裕で漏れが出てくると思います。理由としてはセットリストが適当で楽曲が明確にならないとか、ライブハウス側の作業負担とか。でも、今時ネットでJASRACコードなんてすぐ調べられるんだから、演奏側がセットリスト提出時にJASRACコードを書くようにするシステムにするとか、やりようはあるんじゃないの?とここは問題提起。まあ今までライブでの楽曲使用について使用料をもらった事はないので、今までと変わらないといえば変わらないし「演奏」の信託についてはカラオケの分配を受けるためという事で割り切ってしまうという考えもありますよね。あとこの話は突っ込んで行くと原盤権絡めてクラブイベントどうするよとか凄く難しいのでこの辺でストップしときます。

■レンタルCDを借りた場合

JASRAC登録がある場合は作詞作曲の使用についてJASRACから配分が受けられます。ここが「貸与」。原盤許諾についてはレコード協会(RIAJ)に所属しているレーベルはそこからの配分になります。RIAJ所属でないレーベルの場合は、原盤周りについてRIAJ経由の配分が受けられないので、レンタル会社とレーベルで独自に使用契約を結びます。そしてレーベルから作家に分配という流れです。これはJASRAC経由よりRIAJ経由の方が金額大きいはず。インディーズレーベルのレンタルがあまり無いのはそういう理由(=RIAJ以外は個別契約)もあったりします。(そういうわけでVOCAROCK collectionとかがレンタルあるのはファームレコードさんがすごく頑張ってるのですよ。余談ですが。)

■放送の場合

「放送」です。作詞作曲はJASRAC、原盤はRIAJ、実演は日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター(CRPA)と放送局がそれぞれ包括契約を結んでいます。放送があれば、JASRAC分の配分が受けられます。申し訳ないですが、非RIAJ加盟レーベル原盤や実演周りの配分がどうなってるか自分は詳しく知らないです。

■それでも

原盤権については別のお話かつ自分が権利を保持するので、JASRAC信託があるからと言って
・CDレンタル業者さんが自分の同人CDをレンタルで出したり
・放送局が自分の曲を流したり
・自分の曲の配布カラオケでライブをしたり(大事な事なので2回言いました。これが一番ありそう。)
という事は勝手にはできません
(以前と同じく原盤周りについて自分が許可を出せば可能です)。

分配の際には、出版事業(JASRACとのやりとり、プロモーションなど)の手数料として音楽出版社(自分の場合はXME)にも分配があります。

そんな感じ。間違いありましたらご指摘お願いします。

この件に乗じて与太話を

自分がリスナーさんから「JOYSOUNDのリアルタイムリクエストで交渉中って出てるんですが頑張ってくださいね!」「なにそれこわい。JOYは誰と交渉してるんですか。」という今となってはベタとも感じるやりとりがあったのが2008年1月、そこから「JOYSOUNDに知り合いが居る人はいねがー!」とツテを探って本格的にエクシングさんと交渉を始めたのが2008年5月のGW明け、ということで自分はカラオケ入曲についてボカロ界隈では最初期に動いていました。その頃のボカロシーンや歌ってみたシーンはライブも着うた配信もなく一般的な認知という意味ではまだまだ低い、ほぼニコニコ動画内で完結している界隈。やっとピアプロでお互いが手軽にコラボ交渉出来るようになってきた頃のお話です。

そういうわけで当時、ニコニコ動画に投下したボカロ曲や歌い手さんへの提供曲をいかにメジャーなメディアに登場させるかというのは、界隈を盛り上げ、一般的に認知してもらうための重要な課題と自分は捉えていました。ぶっちゃけるとこの時点で第一興商さんにも探りを入れましたが、実際協力的だったのはエクシングさんだけで、今回エクシングさんと手を取る事にした大きな理由の一つには「なんだかんだあったけど、最初期からボカロ曲や同人・ニコニコインディーズ曲の一般化に貢献してくれてたのは間違いないよね」という気持ちがあります。

さてここで「こういう理由でJASRAC信託曲じゃないと利用料が配分できない」という話がエクシングさんから出てくるのですが、部分信託を行おうにもこんな中途半端な支分権で部署を立てるような奇特な音楽出版社は少なくとも自分の周りには当時ありませんでしたし、自分が直接JASRAC会員になると原則全楽曲の信託となるのが非常に都合が悪い。あと、あの頃のニコニコ動画を知ってる方は分かって頂けると思うんですが、マネタイズがどうこうよりも新しい事を切り開く事の方が絶対ネタとして面白い(今でも個人的にはそのポリシーですが)。そんなわけで無償での許諾にしました。

「無償が当たり前になるとそれで食ってる人が迷惑する」という事に関しては、個人管理楽曲はカラオケについて無償使用が当たり前というイメージに大きく加担してしまったと思っていますし、若干の責任を感じています。しかしそれよりも、あの時期に「ボカロ曲がJOYSOUNDに参戦」する意義の方が自分は圧倒的に大きかったと今でも信じていますし、それがあってこそ今回の話に繋がったのではないかと思います。

CDをショップ委託やamazonなどで流通させながら、アグリゲーター経由でインタラクティブ配信も可能、ある程度のプロモーションも個人で展開できる今、ネックは「JASRACとの包括契約でスキームが出来あがってる業界にどう作家個人が対応するか」であって、そこに特化した出版部署を持つ会社が複数現れている事は非常に作家にとって大きいでしょう。そもそもこの条件で出版を通してJASRAC信託できるというのも以前の状況からすれば凄いことですし、今の作家界隈について非常によく考えてくださったであろう事が伺えます(これはXMEさんだけではなく、今回出版周りの部分信託をお誘い頂いた各社さんすべてに言えると思います。)。

当然、これに追随する音楽出版社もさらに出てくるでしょうし、各音楽出版社はその包括契約系のメディアに対してどのようなプロモーションメリットがあるのかがカギになります。また、レーベルや事務所が音楽出版社と交渉するのではなく、個人で選択する事が可能になった事で、各作家さんがどこと組むのが最善なのか見極める必要がこれからは出てくるでしょう。

今回の話はボカロPだけではなく、同人やインディーズで活動する作家の人達にとっても、ものすごく大きな意味を持つ一歩だと思っています。現に今回自分は同人CDに書き下ろした一部楽曲も信託します。XMEさんのメリットとしては「カラオケ入曲決まる」クラスの楽曲であれば信託が可能なわけで、特定レーベルに主軸を置かないで活動している人に取っては大きな選択肢ではないでしょうか。レーベルにコネのある作家さんですら、個人活動の楽曲をレーベル関連の出版社に頼んで部分信託となると、大抵前述のような中途半端な支分権のみの信託を扱っている出版社は少ないので部署新設→部署についてJASRACに申請の手間がかかる所が現状ほとんどです。ましてや音楽出版社に対して、個人の事情で部署新設をお願い出来るクラスの作家さんなんて界隈全体から見たら圧倒的に少数派と言っていいでしょう。

そういう事を考えると、これって作家さんにとって時代が一歩進んだと言って良いと思うんですよね。そんな話に絡む事が出来てとても嬉しく思います。

作家がそこまで手を広げる是非や意義というのも考えるところかなと思いますが、とりあえず今回はこんなところで。今後ともRe:nGやその関連をよろしくお願い致します。